大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和28年(あ)3316号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

「被告人の弁護人の上告趣意第一点乃至第三点は、判例違反をいうも、その実質は、第一審における単なる訴訟法違反を新らたに当審で主張するに帰し、(第一審判決は本件供与の趣旨を実費を含んだ選挙運動の報酬である旨判示しており、また、刑訴規則四四条は起訴状の朗読は公判調書の記載要件とはしていないから、朗読のなかつたことの立証のない本件では所論の違法ありといえないこというまでもない。」

〔説明〕刑訴規則四四条によつて公判調書の記載要件が非常に制限されたため、第一審終結後に被告人の依頼を受けた弁護人は、控訴趣意書において第一審手続の刑訴法違反を主張するのに甚だ困惑するということをよくきかされる。ところが、他方上告審は、弁護人から控訴趣意書にも主張されておらず、しかも、公判調書の非記載要件にあたる刑訴法違反を上告理由中に初めて主張されて、刑訴四一一条の理由の存否の判断について当惑することが少くない。本判決は、かような場合に対処する最高裁の態度を示すものとして興味がある。本判示は、公判調書の記載要件でない事項は刑訴法違反があつたことの立証のない限り、違法の手続はなかつたのだとしているのである。この立証とは結局被告人側の立証ということになるのであろうが、かようにはつきり割り切つてよいものかどうか疑問を挾む向もある。即ち、単に公判調書に記載がないというだけでなく、左様な手続は通常適法に行われているのが実情であるという一条件を附加する必要があるのではないかというのである。しかし、本判示も勿論言外にこの趣旨を含めているものと解してよいのではなかろうか。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!